100周年イベント、大成功


踊ってきました、見てきました。サンバ会場での日系移民100周年記念の一大イベント。
正直、あんなに大規模で、ものすごい状態になっているとは想像もしなかったよ…。
まずすごかったのが付近の道路の大渋滞。はっきりいって、今まで経験した中で一番ひどい渋滞だった。
パライゾのホテルからタクシーで30分もあれば余裕で到着するはずの会場に、1時間近くたっても着かない。集合時間を軽く過ぎ、私たちの出場時間まであと30分足らずとなってもまだまだ着かない…。


仕方なくチラデンテス付近で降り、アルメニア駅から会場最寄りのチエテ駅までひと駅だけ地下鉄に乗った。
巨大なサンバ衣装と、半分眠ってるアレックスとコイを連れて。ふーーー。この時点でかなり疲労度アップ。
で、やっとのことで会場にたどり着き、思った以上に出場者であふれかえっているのに驚き、なんとか集合地点まで行き着いた。ふぅ。
到着して30分もしないうちに、たぶん予定時間どおりにパレードはスタートした…と思う。
なんだかわけのわからないままに本番を迎えちゃった。


私たちが参加させてもらったグループは、「Bloco Arigato」(ブロッコ:サンバをするグループの意味)と言って、日系ではなく生粋の日本人たちが集まって結成された、このイベントのためだけの団体。
3月に参加申し込みがあり、私たちがサルバドールに引っ越す日の前日がちょうど参加締切日だったんですね。
その日、サルバドールからサンパウロに来られるかどうかは、その時点ではわからなかったけど、お祭り一家の我が家としては申し込まずにはいられず…参加費を払い、身分証明書番号や写真を提出して申し込みをしたのでありました。
そう、皇太子さまも出席するイベントだからか、参加者の身元確認がかなり厳しかったみたいで。写真まで提出だもん、びっくりよね。


そして、他の皆さんが懸命に土日を使って練習を繰り返す中、私たちは不安と焦りとでいっぱいになりながら、ウェブ上で見られる振り付けビデオなどを見て細々と一家で練習したのでありました。


迎えた当日、170人ほどの日本人団体はなかなか圧巻で。びしっと揃った衣装は、こうやって団体になるとすごく美しく映えるのね。
踊り自体の写真はもちろん写せなかったんだけど、最後の集合写真をご披露しましょう。




出演は約5分間を2回。参加団体は確か50くらいあったから、限られた時間で全グループをおさめるには、出演時間の厳守はもちろん、移動時間や入退場の時間もきっちり決められている。
多くの「ボランティア」の方々や、グループの「アルモニア」係(隊列を整えたり、連絡事項をみんなに伝えたりする、グループのリーダー的存在)の方々に誘導されながら、よどみなくパレードは進んで行きました。


さてそのボランティアの方々って…いったいどういう立場の方がやってるのか?と疑問に思って聞いてみましたら、みなさん、宗教関係だそうで。
赤いベストは生長の家、緑が創価学会、青が…という具合に、色別に各宗教関係の皆さんが関わっていたとのことです。そうだったのか。すごい人数で、老若男女メンバーはさまざまだったけど、宗教関係だったのか…。
本当に頭が下がる思いです。
いろんな宗教の人たちが一つになって活動するあたりがすごいと思った。
そして、日系100年がブラジルにもたらしたものとして、宗教というのもかなり大きな位置を占めていると改めて実感させられましたよ。
ボランティアには、もちろん非日系の若者もたくさんいましたから。すごいぞ、日系宗教。


さて話はそれましたが。
明らかに練習不足な私たち一家だったけど、本番ではなんとか頑張りました。アレックスはただ直立不動できょとんと立っているだけだったけど、それでも泣き出したり抱っこをせがまないだけマシというもの。
よく頑張りました。

私たちは、「幼稚園アーラ」という、ほんとに小さい子たちとその両親たちで組織される集団の最後尾にいたんだけど、あちこちから「キ ボニチーニョ!!(まぁ可愛らしい!)」とのお言葉をいただき、楽しませてもらいましたよ。
ついでに、私たち夫婦が着ていた、2007年のサンパウロカルナヴァル・X−9パウリスターナの青いサンバ衣装は、子供たちにとっても珍しかったようで。いろんな人と一緒に写真を撮らせてもらいました。ありがとう!
最初、練習にも全然参加できないし、出るのは申し訳ないからやめようか…と出場をあきらめようと思ったんだけど、やっぱり出て良かったよ。楽しかった。
踊る阿呆のほうが、やっぱり好き。


ちょうど私たちの出番が終わったころ、皇太子殿下の登場があり、続いてお言葉があり、驚いたことに日本から海上自衛隊の一団が来ていたのですね〜。
一糸乱れぬ行進は、かなりかっこ良かったですよ。ちょうど会場外の屋台で肉串やホットドックを子供たちに食べさせていた最中だったので(涙)、よく見えなかったのがとっても残念なんだけど。
日本の自衛隊に続いて、今度はブラジルの軍隊の行進。騎馬隊も出て、見ごたえがありました。
こういう時に軍ってどうなの?と思わなくもないけど、会場が華やいだのは事実。
これも国際交流ということでしょうね。


それから私たちも客席に移動して、夜8時ごろまで続いたパレードを楽しみました。
阿波踊りあり、琉球踊りあり、ヨサコイあり…で、ずっと飽きずに楽しめました。それにしてもやっぱりすごいわ、ブラジルの日系社会って。
どの演目にしても、日本人じゃなくて「日系人」がやってるんだからねぇ。おそらく、私たちのグループ(日本から駐在で来てる日本人)と、今日のためにわざわざ日本から来たと言う民謡団体(?)くらいじゃないかしら、ブラジルのパスポートを持ってない人たちって…。
圧巻だったのは和太鼓。あのサンバ会場、約800メートルほどのコースに、ずらーーーと並ぶ大小さまざまな太鼓の軍団はすごかった。音を合わせるの、大変だろうなと思ったよ。



観客席の人の入りもハンパじゃありません。ホントのサンバカーニバルの時と同じくらいの観客数でびっくりよ。
無料の入場券はギリギリまで発行されず、欲しくてももらえなかった日系人もたくさんいると聞きますが…。そのへん、もうちょっと早くからなんとか調整できなかったのかしらねぇ???
パレードの時間割も当日の数日前まではっきりせずに、ホントに実行されるの?という疑問も湧いた今回のイベント。
でもふたを開けてみたらかなり本格的で、かなりよく出来ていたと思いましたよ。
さすが、帳尻合わせが上手なブラジル人。日系人とはいえ、やっぱりブラジル人なんだよなぁ。段取りなしで、結果オーライタイプっていうの???
それはそれですごいと思うけど…日本人としては、事前にいろいろとわかったほうが行動しやすいと思うわけで。



イベントのフィナーレ、第3部には、今年のカルナヴァルで私も出場したチーム「ヴィラ・マリア」が登場するというからかなり楽しみにしていた。
なんたって今年のテーマは「日系移民100年」だったからね、ヴィラマリア。
そのパレードの一部が再現されるのだ…と信じて、すっごい楽しみにしていたら。
残念ながらあの曲であのパレードというのは再現されず、100周年オリジナルの曲をサンバにアレンジしたものでありました。
山車は、大仏など何点かはカルナヴァルのものを再利用していたけれど、内容は全然違うものになっていた。ちょっと残念。あの興奮を少しでもまた味わえると思っていたからね〜。






だけど、別モノは別モノとして素晴らしかった。(サンバで阿波踊りを踊るみなさん、素敵すぎ!)
第3部では、会場の大スクリーン数か所に、日本移民の歴史を語るビデオが上映されたのだ。初期の苦労、戦争、農業面での活躍、子弟への教育など、私が先日ポル語で発表した内容がコンパクトにうまく伝えられていた。
ビデオは、1エピソードが終わるごとに一休みが入り、ヴィラマリアの山車がそのつど紹介された。笠戸丸をテーマにしたもの、教育をテーマにしたものなど、今回のパレード用に作られた山車もあった。
あああ。これを先に見ていたら私の発表ももっとグレードアップしたのに(笑)
会場はシーンと静まり返り、誰もが熱心にそのビデオを見ていた。
その情景に私は思わず涙が出そうになった。歴史を知れば知るほど、泣けてくる。


好きでブラジルに住み続けたわけじゃないのに。それでも少しでも生活を良くしようと努力して。2世や3世は日本語を話せない完全なブラジル人も多いけど、日系だからってことで少なからず苦労していることがあるだろうと思う、今だって。
いろんな世代の、いろんな日系人が今ここに集結して、一つの映像を見て。
それぞれの胸の内を思うだけで、泣けてきた。涙もろいのは年のせいもあるけどさ、でもね、なんか感動するじゃない。
人はみな、それぞれの置かれた境遇で頑張って、生きていくしかない。
その結果が今、ここにあるんだと思うとね。
泣けてきた。


これを書いている今は、2日目の日曜のパレードを終えて、踊り疲れた子供たちが遅い昼寝をしている。
今日も多くの日系のおばあちゃんたちに会った。ラジオ体操軍団。なんと1300人だって!
田舎の老人クラブで見るお年寄りと変わらない笑顔が、こんなに遠い地球の裏側のブラジルに、こんなにたくさんあるなんて。
それだけでもう涙。



サルバドールにいては絶対感じることが出来なかった何かが、ここにはあった。
移民100周年だからって、単なる通りすがり住民である私たちのような駐在員には、正直、あまり関係ないというか。ああ、そうなんだ、という感想であることが多いんだけど。
でも。
ブラジル移民100周年のこのひとときを、同じ場所で共有できたことを幸せに思った。ただただ、単純に。


最後に、イベント公式キャラの「チカラくん」と「ケイカちゃん」。会場で配られた小さい旗であります。
作者は、ブラジルでもっとも有名な「モニカ」というマンガを描いている、マウリシオ・デ・ソウザ氏。
このネーミングの由来をぜひ聞いてみたいところだ…。