賃上げ交渉

うちでお願いしているファシネイラ(掃除婦)、結構早口でダダダーっとしゃべるタイプなので、なかなか彼女の言ってることすべてを理解することは難しい。
同じポル語を話してても、はっきりゆっくり話してこちらが理解しやすい人と、そうでない人がいる。
それは日本語でも英語でも同じか… 明瞭に話せる人ばかりじゃないよね。


さて今日の彼女はいつにも増しておしゃべりであった。そして何やら、お金の話をしているっぽい。
ん?もしかしてこれは賃上げ交渉なのか?と思いつつ、すべてを理解することは出来ないので、時々うなずきつつ、時々ぽかーんとして聞いていた。
バスや地下鉄に乗って遠くから通ってきている、とか、毎回自分のお弁当を持参している、とか、貧しいのでどうのこうの…とか言ってる…気がする。
要するに日給を少し上げてほしい、という話だと察しはついたけれども、よくわからない状態でOKとは言えないからね。
ちょうどこの日は家庭教師ルーシー先生の来る日。彼女もそれを知っていたので、「あとで先生に私の言いたいことをあなたに伝えてもらうことにするわ」と言い出した。
ポル語をポル語に訳してもらうってことですか?はぁ。そんなんで私、理解できるんだろうか…


そしてファシネイラと先生で何やら腕組みしながら話し合い。
ファシネイラが何か説明するたびに、先生は「ああそうね〜わかるわ〜」「その通りね〜」などと神妙な顔でうなずいている。
私も二人のやり取りを一つでも聞き取ろうと耳をダンボにして会話を聞く。
どうやら、ファシネイラの相場がいくらいくらなのに、自分はいくらしかもらってない…みたいな話もしてるようだぞ。
ん? とか思って聞いてたら、どうやら話は終わったらしく。
ファシネイラは先生に軽く耳打ち。「全部の話を伝えることないからね、余計なことは言わないでね」っぽいことを言ってるぞ。


それにうなずいた先生、私にはシンプルに「要するに日給を10ヘアイス上げて欲しいという話よ」と一言。
いろいろ言ってたみたいだけど…?と聞き返すと、「そうよね、彼女は多くのことを言いすぎるから余計わかりにくくなるわね」と。
日給の相場の話もしてたでしょ?と聞くと、あぁそうそう…と小声で「実のところ相場より彼女は相当安いわよ、今の相場はいくらいくらで、うちもファシネイラにはいくらいくら払ってるわよ」と教えてくれた。


やっぱりそういうことだったのね。
それならそうと、シンプルに言ってくれれば私もわかりやすかったのにー。
ま、彼女は彼女なりに遠まわしに、いろんな理由をつけて、スムーズに賃上げを認めて欲しかったんでしょうね。
申し訳ないけど、すべてを理解できなくてごめんなさいって感じ…。
中途半端に自分がわかる(都合のいい?)とこだけしかヒアリングできないなんて情けないわ、ほんと。
それでも半年前よりはずいぶん聞こえるようにはなったと思うんだけどなぁ。
ポル語の先生の話し方なら、数倍よく聞こえるんだけどなぁ。
ほんと、話し方によって全然ヒアリングの出来が違うということを実感…。ポル語をポル語で翻訳してもらうなんて、不思議だけど実際それで理解できるんだからねぇ。


どこへ行って、誰と話しても理解できるだけの耳になりたい。まだまだポル語道、先は長いのだ…


で、賃上げ。私は彼女の働きぶりにも性質にも満足しているので(アレックスのこともすごく可愛がってくれるし)、二つ返事でOKしたよ。
ファシネイラとも回を重ねるごとに、お互いの信頼が増すような気がするのもうれしい。
いろんな人がいると聞くけど(物を盗むとか、アイロンかけで生地をだめにしちゃうとか)、うちに来てくれてる人はいい感じなので気に入っているのだ。
何より、アレックスをよく見てくれるのが助かる。ポル語のレッスン中はアレックスの相手をしてもらっているし、短い時間なら彼女に託して外出することもある。大切な子ども、どんな人にも預けられるわけじゃないもんね。