入院の手続きと検診


ほんの数分で病院に到着。ロビーにはまだ人は少ない、けれど私と同じように
大きなはちきれそうなお腹を抱えた妊婦が、夫に付き添われて2組ほど、いた。


まずは受付にて入院の手続きだ。
以前、見学に来たときに名前や住所などの基本情報と出産予定日が病院のPCに
登録されていたから、名前を告げたら受付の女性がそれらの情報を確認していた。
そして改めて入院のための書類などに夫がサインしていた。


私だけ診察室に呼ばれて、問診および内診を受けた。
ベッドに横になり、子宮口の状態をチェックしてもらう。5センチ開いていた。
「オジェ」(今日ね)と言われる。今日生まれるわよ、ということね。
そっか、この時点で「まだまだだから、いったん家に帰りなさい」ということも
ありうるのかな、ブラジルでも。
そして問診では、身長・体重・アレルギーの有無、体調などを聞かれた。
もちろん、この間にも強い痛みは10分おきに襲ってくる。ときどき顔をゆがめつつ、
質問に答える。
そしてここで、問診担当の女医が、私の主治医であるタツコ先生に電話で連絡してくれた。
産婦人科医のデータが入ったPCで、タツコ先生の顔写真を画面に映し出し、
「この先生で間違いないわね?」と確認を求められた。
「これからこの先生が病院に来るからね」と言われ、安心した。あぁ早く日本語で
コミュニケートしたいよ。タツコ先生以外、この病院ではすべてポルトガル語だから…。


待合室に戻ると、ババさんも到着していて、すでに長男の相手をしてくれていた。
夫も立会いで分娩室に入るから、その間、長男をケアしてくれる人が必要だったのだ。
このババさんは、以前にも一度お願いしている方だから、長男もすぐになじんで一安心。
遊んでもらってうれしそうな長男の様子を見てホッと一安心したら、
今度は私だけ2階に連れて行かれた。なにやら説明しながら連れて行かれたんだけど、
いかんせん言葉がよくわかんない…。もう、ここからはなされるがままである。


2階でもまたさっきと似たような問診があり、今度は書類にサインを求められた。
もちろん、内容なんて全然読めないけれど。
そして右腕に名前とバーコードが入ったバンドをつけられる。
不織布でできた服と帽子、靴下(使い捨てのもの)に着替え、青い綿のガウンを羽織った。
どうでもいいけど、この不織布の服、寒いんですけど…。
まぁ陣痛の痛みに比べたら寒さなんてへっちゃらですけど。
先ほどロビーで見かけた妊婦さんも、同じように着替えていた。
何て言っていいかポルトガル語が出てこなかったので、目と目で会話した(つもり)。
頑張ろうね、って。


車椅子に乗るよう言われ、あぁやっと座れるよ…と思ったら、すぐに次の部屋に移動。
見学のときに見た個室とはちょっと様子が違うけど、ここが私の部屋なのかな?
すぐにベッドに横になった。
看護婦さんがベッドサイドのラジカセでFMの音楽を流してくれた。
左手の甲に点滴を入れられた。生理食塩水かな。塩、という単語だけは聞き取れたから。
10分間隔だった陣痛は、次第に7分…5分…と短くなり、
痛みの時間は、1分近くになっていた。1分もあの強烈な痛みに耐えるのって相当ツライ。
時計を見たら、8時ちょっと過ぎていた。
同じく青い綿のガウンと不織布の帽子をかぶった夫が、部屋に入ってきた。
約1時間ぶりの再会だけど、妙にホッとした。
私のお腹には、赤ちゃんの心音を聞く装置と、痛みを数値で表す装置(?)が付けられた。
トットトットッ… 元気な心音に勇気付けられ、よぅし、母さんも頑張るよ、と
お腹に念を送った。