旅立ち

私がサンパウロで一番親しくしていた友人一家が日本に帰国した。


彼女とは、たまたま共通の友人が日本にいたこともあり、出会ってすぐに仲良くなり(というか、出会う前から話を聞いてたので、初対面な気もしなかったんだけど)、他の誰よりも信頼でき、ダンナ同士もとても仲良くなり、他に家族や親せきのいないここサンパウロでは、本当の家族以上にお互い支えあって助け合って生活していた仲。


サンパウロで一緒にしたこと、行った場所、食べたもの、聞いた音楽、話したこと、笑ったこと、泣いたこと…
もう、彼女とは、数え切れないくらいいっぱいいっぱいありすぎて、何をしていても、つい彼女たち家族のことが頭に浮かぶ。そんな仲。
これを書いている今現在も、もうここにはいない彼女たちを思い、ふと涙がこぼれている。


いいトシしてこんなに泣くなんて、と言うくらい、泣いている。
いや、トシのせいで涙もろくなったのかもね。


日本から派遣されて海外に来ている会社員の妻、という立場で言えば、こういう別れはこれまでもこれからも頻繁にあることで。立場上、避けて通れないこと。
私もいつかはここを去り、またどこか別の場所へゆくことになる。
わかっちゃいるけど、別れは辛いね。


グアルーリョス空港は、ありえないくらいの大混雑で。
ありえないくらい駐車場が空いてなくて、普段ありえない場所に縦列で止めている車がたくさんある中、ぐるぐるぐるぐるしてようやく帰る車を見つけてそのスペースに滑り込んだ。
空港の中も、人ごみをかき分けてかき分けてやっと目的のカウンターにたどり着けるような状態だった。
なんなんだ?あの人ごみは。
そうか今日はブラジルの祝日だ、今日から6連休と言うブラジル人も多いのだ。みんな旅行に出かけるのかな。
(そういえば韓国の若手ロックスターのような人がファンに囲まれている一角もあった。あれは誰だったんだ?!)


最後に彼女と抱き合って泣いた時、私は言いたいことの半分も言えなかった。
こんなことなら、お手紙を書いて渡せば良かった、と思った。
でも、彼女の涙と私の涙、彼女の肩と私の肩、言葉じゃないけれど何かは伝わったと思う。言葉にならない何か。
一つだけ声にして言えたのは、


私は○○くん(彼女のご主人)にありがとうと言いたい。
○○くんがいなければ、私たちこうして会うこともなかったんだよ。
出会いをありがとう、と。


彼女たち一家が私たちに残してくれたものは、とてもとても大きくて。
私の人生観をも、大きく変えた。
運命にはいろいろあるけれど、今は、私と彼女が出会えた運命に感謝したい。


これからまた、日本で新しい生活が待ってるね。
次に会える時は、お互い、どんなふうになってるかな。
笑いジワがまた増えて、そうね、私は歯ならびが良くなって少しはボニータになってるかしら。
もっともっと日焼けして、ブラジレイラに近づいているかしら。
そうなった私を笑い飛ばしてくれるよね、きっと。


次に会う時に、恥ずかしくない大人の女性であれるように、今日からまた一日一日、しっかりと生きていこう。
お互いにね。
また会う日まで。