ドイツ色が色濃く残る地域のおいしいレストラン


旅の最終日は軽く市内を散策。ホテルの近くにドイツ移民の家と称される資料館があり、そこを見学した。
最初に入植したドイツ人・ブルメナウさんのいとこだか姪だかという女性が住んでいた家をそのまま残したもので、屋外には可愛がっていた猫たちの立派なお墓もあり、彼女の人柄と当時の様子を偲ばせる貴重な家であった。
案内してくれた若い男性ガイドさんは、質問するとちゃんと答えられる、しっかり勉強している人のようであった。私は日本の移民史料館しか知らないので、ドイツ系移民の話はとても興味深く思えた。
ポルトガル語の理解度が微妙なところではあるけれど、なぜブルメナウを選んで住んだのか、先住民インディオとの関係はどうだったのか、などなど質問してみたりした。


それから少し昨日のパレードルートとなった通りを歩いた。日曜日だからほとんどの店が閉まっているのが残念。
この街にはHering(洋服)やKarsten(タオル、シーツ類)の工場があるから、アウトレット価格で安くそれらを買うことが出来るらしい。郊外に大型店はあるけれど、この通りにも支店が出ているようだから、明いていればお得な買い物が出来るのになぁ。
数軒、お土産屋さんが開いていたので、そこでドイツデザインのTシャツなどを買う。日系のお祭りでもちょっとカッコいい日本風Tシャツを売ればいいのに、と思う。この店のドイツ風デザインTシャツはうまく国旗デザインをあしらっていて、すごくかっこいいのよ。
そういうのが、リベルダージにもあればいいのに… 微妙な漢字デザインや偽キティちゃんばっかりじゃなくてさ。


日本と言えば、ブルメナウの文化協会みたいなところに、日本語教室のポスターがあった。こんなヨーロッパ系の町にも日本語教室とは…ちょっとびっくり。


午前中いっぱいでホテルをチェックアウトし、ランチするための店に移動。最初、郊外のビール工場併設のレストランにしようと思ったら、どうも日曜は休みらしい。かなり残念。
で、ブラジルのガイドブックに出ていた、Vila Itoupavaにあるドイツレストランを目指すことにする。ここはセントロから25キロくらい離れていて、ドイツ系が多く住む地域なんだそうだ。
案外わかりやすい場所にあり、迷わず着いた。確かにずいぶん街から離れているよ、なのにお客さんがいっぱい。人気があるのねぇ。


お店はレンガ造りのドイツ家屋。テーブルには赤白ギンガムチェックのクロスがかかっていて可愛い。ドイツムード満点だ。
そしてここのウエイトレスさんたちも見事に目が青い。思わず質問してしまう。「ドイツ系の子孫ですか?」と。
感じのいい彼女はもちろんポルトガル語で「そうよ」と答える。でも、もっと突っ込んで質問してみると、なんとポル語よりドイツ語で話すほうがラクなんですって!
家ではドイツ語ばかりで話し、お父さんはドイツ語しか話さないんだそうだ。20代後半とおぼしき彼女、もう3世くらいになるだろうけど、それってすごいと思った。
日系3世で、純粋にブラジルで生まれ育った青年が、ポル語より日本語の方が話しててラク…ということがあるだろうか?
日系の移住地では、そういうこともあるんだろうか?
私の知る3世の日系人は、日本語を話すけれどポル語のほうが当然スムーズ、という人が多いように思えて…。ドイツ系の彼女の言葉がとても新鮮だったのだ。


さて肝心の料理。この店にメニューはなく、座ってビールを頼んで待ってたら自動的に料理が出てくる。
まずは付け合わせのザワークラウト(キャベツの酢漬け)とか、ムラサキキャベツのちょっと甘いのとか、かなり美味しいリンゴのピューレとか、マッシュポテトとか。
ドイツ料理らしいラインナップである。


そしてメインのmarreco assado(マヘッコ・アサード…店の人はマレッコと発音していたけど???)。これはコガモの肉をこんがりローストしたもの。それにもう一品、写真奥に移っているのがmarreco recheado、これはハンバーグみたいな感じ。野性のクセがありそうと思いきや、そうでもない。チキンをちょっとワイルドにした感じで、香ばしくて美味しい!


タンのトマト煮も出てきた。これもドイツ名物なのだろうか。やわらかくて美味!
うれしいことに、これらの料理が食べ放題である。ちょっと時間がたって冷めたと思われるものについては、いったん下げて、アツアツのものに変えてくれるのだ。
そういえばパンもご飯も出てこなかったけど、そうかドイツの主食はジャガイモよね?!


ここでも当然、地ビールの生をいただく。昨日より少し体調が良くなっているから、美味しく飲めた。
小さな庭もテラス席も美しく、とても心地よい食事が楽しめる。これまた、ブラジルにいることを忘れさせてくれる環境だわ。



でもやっぱりここはブラジル、と思うのは、店内にテレビがあり、この日はF1グランプリのブラジル戦最終日を生中継していた。店内のお客さんもスタッフも釘付けである。
きっとワールドカップの時は、この店内も黄色と緑に染まるのね…。やっぱりブラジル…。


店を後にしてまたジョインビレまでドライブ。やや道を間違えたため、幹線道路ではなく、隣町のPomerodeに通じる山道を走ることになった。
そこには農家の家が点在していて、山の斜面が牧草地になっていて牛や馬がのんびり歩いていた。
どことなくハイジの世界のような… とても素朴な家と、動物たちと、そして青い眼の住民と。


ときどき分かれ道になっていて迷いそうになったけど、点在する家の人々や、すれ違う数少ない車のドライバーさんたちに尋ねながらなんとか街にたどり着いた。
やや冷やっとしたけど、こういう世界が垣間見れたのもいい経験。このあたりは、住民の8割をドイツ系が占めると言う、ブルメナウよりもずっとドイツ色が強い地域だそうだ。



入植当時のままの場所で、レンガ造りの家をそのまま保ち、今もなお時が流れている。テラスでは、真っ白が美しいほどの白髪のご夫婦が、のんびりくつろいでいた。
こういうブラジルもあるのだなぁ。ブラジルは本当に奥が深いよ。


ジョインビレからサンパウロまで、飛行機に乗ってしまえばフライト時間はたったの40分。近いもんだ。
だけどサンパウロとは全然別の世界が広がるサンタカタリーナ。また行きたいと思う、大好きな州になった。