大御所カエターノ・ヴェローゾを聴きに


ブラジル音楽をたしなまれる方なら誰もがご存知であろう大御所のひとり、Caetano Veroso(カエターノ ヴェローゾ)。
私も日本にいたときから名前だけは知っていた。(私が好きな今井美樹が出産後に彼のコンサートを夫婦で見に行き、とても感動したとご本人の日記で綴られていた。それで知っているわけ)


でもどちらかというと女性ボーカルのほうが好みなので、特に熱心にカエターノの研究をしたことなどはない。
どちらかというと、広く浅くブラジル音楽を聴きあさっているダンナのほうが詳しかったり。


まぁそのくらいの知識だったんだけれど、日本でも知られる有名アーティストだし、市内でコンサートがあるんだったら行きたいね〜とダンナと話していた。
そしたら先日、いつもの金曜日の新聞付録のコンサート情報コーナーで、カエターノのコンサートがあることを知ったダンナ。
ほんと、こういう情報を見つける彼の目はすごいと思う。コンサート情報にかける情熱は、私よりずっと大きい…


というわけで、行ってまいりました、カエターノヴェローゾのショウ。
場所は、ミュージカルSweet Charityを上演していたモエマにあるホール。確か名前はシティバンク・ホール。
モエマなら家から近いし便利便利。人気アーティストのコンサートといえば、南のほうにある結構遠いホール(トン・ブラジルとか、クレジカージ・ホールとか)のことが多いからねぇ。


今回も、テーブル席で、飲食しながら聴くタイプ。でも私たちは、モエマの有名ショッペリアにて軽くつまんできたところなので、今日は飲まずに音楽に集中!
予定時刻より30分遅れくらいでカエターノ登場。



シコ・ブアルキのときと同じような、超カジュアルなスタイル。紺のポロシャツにジーンズ姿であった。
ブラジルのアーティストはいつも、特にステージ衣装という感じではない、シンプルで気取らない服装でステージに立つことが多い気がする…で、それがちゃんと似合ってるんだからいいよなぁ。
本人に魅力がないと、シンプルなスタイルは映えないからねぇ。


さてカエターノの歌であります。
たまにCDで流している程度で、あまりじっくりと聴いたことはなかったんだけど、生で聞いた歌声の印象は、大変力強く声量のある方だなぁ…と。
曲調も、何て言うか、独自の世界を築いてるっていう感じ?
サンバでもなく、バリバリのバイーア音楽でもなく… なんかロック調っぽいような曲も多かったり。
(あとで調べてみたら、彼の最新アルバム「cê」は、新たな試みとして今までにないロックテイストをふんだんに取り入れたんだとか。なるほど、だからか。)

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そう、彼は、バイーア出身。イヴェッチ・サンガーロやガル・コスタなどのバイーア系音楽の先駆者とされている。
トロピカリズモ、というそうですが。
本当は、そのあたりの歴史もちゃんと予習してから今回のコンサートにのぞめばもっと良かったと思う…
完全に勉強不足でしたわ。


というわけで、なんとなくまったりと、心地よく時々うつらうつらしながら(いや、ちょっと寝不足が続いてたのよ、すいませんカエターノ!)、シンプルに彼の音楽に酔わせていただきました。


客層はどちらかというと年齢層が高めだったかな。やはり大御所には熟年のファンが多くついているのですな。
ひとつ気になったのが… ものすごーく気になったのが…
ショーの途中、彼のトークタイムで会場が少し静かになったとき、後方から「日本語で」ヤジが飛んだ。


「カエターノ へたくそー」


…と。
あのねぇ。ブラジルの大御所に向かってへたくそとは何ですか下手くそとは!
彼が日本語を理解しないだろうと思って、わざと口にしたんだろうけど、何て言うかさ…同じ日本語を使う者として非常に悲しかったし情けなかったね。
誰ですかああいう発言をああいう場でしちゃう人は。
そんなことがあって、ちょっと気分が悪くなっちゃった。信じられない日本人がいるもんですな。
実際下手くそならまだしも、どう考えても下手くそじゃないと思うんですけど。


と、後味が悪くなりましたが。
ともあれ、彼はファンサービスも旺盛で(最前列のファンに握手して歩いてた)、とても楽しそうに歌い、生命感あふれる歌手だなぁと思わされました。

これまで大御所系は3人、
シコ・ブアルキ、
イヴァン・リンス
カエターノ・ヴェローゾ …とコンサートに行ってまいりましたが、この3人の中で選ぶなら、私もダンナもダントツでイヴァン・リンスですね。
今井美樹が絶賛していたカエターノですが、私たちの中でのナンバーワンの座は不動なイヴァンなのでした。
まさに、音楽の好みは千差万別でありますな。