9日目:晴れて退院


久々に何にも邪魔されず、ぐーっすり眠って明けた朝。私より早く起きたのはコイだった。
もうちょっと寝かせて〜。と時計を見ると、ぎょぎょぎょ、も、もう9時半???
そんなに寝ちゃった???
携帯の時計を見たら、まだ8時半だった。
そうだった。入院したその日の夜に、ブラジルの夏時間は終わったのだった。日本との時差が12時間、昼夜完全逆転に戻ったんだった。
寝室の時計の針を直すのを忘れたままだったのね、ダンナよ…。仕方ない、彼もいっぱいいっぱいだったからね。
ともあれ、まだ8時半だったのでちょっと安心。朝食をとり、ダンナからの連絡を待った。
今日の午前中、退院を許可されるかも知れないのだった。


そして10時過ぎ。無事、退院OKの連絡が入った。もう午前中で退院してもいいんだって。
よ、よかったぁ…。昨日の焼肉パワーがきっとアレックスにも伝わったんだね、なーんて都合のいい解釈をする私。さすがB型?
慌てて準備をし、コイとまたタクシーで病院に向かった。タクシーでの病院通いも、これで最後にしたいなと思いながら、何度も通った道を走る。


今日のアレックスは確かに元気一杯。見事、点滴もはずされ、自由の身となってベッドの上で歩き回っていた。
もう誰が見ても病人じゃないね。もう大丈夫だね。
昨夜から食欲がものすごく旺盛で、付き添いのダンナが驚くくらい、いくら食べてもおかわりを求めるんだって。
良かった。本当に良かった。


病室の荷物をまとめ、事務室で退院の手続き(と言っても、テレビのリモコンを返却し、これまでの検査結果データを受け取った程度)をして、いよいよ病院を去ることになった。
ナースステーションに顔を出してみたけど、お世話になった顔ぶれはいなかった。一日3交代なのかどうかわからないけど、とにかく入れ替わり立ち代りでいろんなスタッフと関わった。
お礼を言って、1階に降り、我が家の車に乗り込んだときの安心感といったら…。
ベビーシートに座るアレックスの姿を見たら、もうそれだけで感激の涙であった。
いつものように、ここに、こうしていてくれる。そんな日が来て本当に良かったよ…。


なんだか、たかだか1週間ちょっとの入院でそこまで思うのは大げさすぎるかも知れないけど、ホントにそう思ったんだもん。
今まで、病気や怪我とは、ありがたいことにほとんど無縁だった我が家。入院がどれだけ辛いことか、想像もつかなかった。
本人の辛さ、付添い人の体力的・精神的な消耗、そのほかの家族の日常もガラリと変わってしまい、みんながどれだけ大変になるか。
よぉーぉーぉーーーーくわかりましたよ。


もう2度とこんな思いはしたくない。だからこれからは、もっともっと体調管理に気を使わないと。
特に、異国での入院、実家も親戚もない状態での入院は、多くの友達の協力がないと絶対回っていかなかった。
どうしてもダンナが早く帰れない日、コイを預かり泊めてくれた友達。電話やメールで励ましてくれ、グチを聞いてくれた友達。
お弁当を差し入れてくれた友達、元気付けに誘ってくれた友達。
そして、心の中で回復を祈っていてくれたみんなにも、本当に本当に感謝しています。
病室の中で私は孤独だったけど、本当はいろんな人に囲まれていた。助けられていたね。
皆さん、本当にありがとうございました。もうみんなに心配をかけないように、迷惑をかけないように、これからはもうちょっとおとなしく過ごします…


そして、この場を借りて。
幼稚園でアレックスから嘔吐をうつされちゃったお友達…本当にごめんなさい。みんなも辛かったね。ごめんね。
たかが下痢、されど下痢。ブラジルの菌は強烈です。
在ブラジルの幼子をお持ちの皆さん、夏の海にはご注意を。そして、脱水症状が出る前に、適切な処理をしてくださいね。
我が家の二の舞にならないように…。