幻のTake6と、往年のブラジルアカペラ、Os Cariocasコンサート


Take6(テイクシックス)といえば、アメリカのベテランアカペラグループ。確か日本では以前、車かお酒か?のコマーシャルソングにも使われていたりしたこともあったと思うから、その歌声を耳にしたことがある人も多いと思う。
私は結構アカペラが好きで、ゴスペラーズのコンサートにも行ったし、Take6とかAll 4 One(これもアカペラ系)のCDもよく聞いている。
人間の声だけで繰り広げられる音楽って、何より素晴らしいよねぇ、なんて思いながらうっとりして聞き入ってしまう。


だからブラジル、しかもサンパウロにTake6がやって来る!という情報をゲットしたときはすごーくうれしかった。
すぐさまチケットを買いに会場のホール窓口まで車を飛ばし(これはダンナがね)、当日を楽しみに楽しみに、指折り数えて待っていた…。
なーのーにー。
当初の予定だった2月3日はなんと中止となり、2月9日に延期となった。まだ完全中止じゃないだけ良かったか、たまたまTake6の公式サイトでそのことを知って良かったよ…と思っていた。


で、2度目の正直?2月9日が迫ってきた。
しかし、やっぱり今回も様子がおかしい。いつもなら、金曜発売の新聞の付録についている週末ガイド冊子の、「本日のコンサート」欄にTake6の名があるはずなのに。
な、ない…。
もしかしたらまた延期?はたまた中止っ???
慌てて会場に電話したら。あっさり、キャンセラードと言われてしまった。キャンセルされたってこと。
ブラジルよ…Take6に嫌われるようなこと、何かしでかしたのか???
それともTake6の急病???
そのあたりの理由は語られることなく、とにかく今夜は中止で、後日延期の予定もないからチケット払い戻ししたいなら今月中に買った場所に出向きなさい…と。おわびの言葉もなく、電話の向こうの女性は淡々と告げた。
うーうーうー。さすがブラジル的対応。日本なら、外国人タレントのコンサートが延期もしくは中止になったりしたら、そりゃもう大騒ぎになるんじゃ?


とにかく、そんなわけで、せっかく夜のババさんもすでに手配して夫婦で楽しみにしていたのに、ぽっかりと夜の予定が空いてしまったのだった。
がっくり。


しかし、ただでは起きないぞ。
前述の週末ガイドをつぶさに読み、今夜、何かめぼしいコンサートでもないか…必死で探す。すでにババさんのキャンセルは効かない時間帯。どうせ夜、子どもなしで過ごせるなら、夫婦で出かけるしかないでしょう!
すると、何度か行ったことのある小さなライブハウスで、奇遇にもアカペラ系ブラジル人グループのコンサートがあることを発見。こ、これだーーー。
(同日、Fatboy Slimというこれまた有名バンド?イギリス??のコンサートもサンパウロであるようだったが、ちょっとこれはジャンルが好みではないなぁ、と却下)


グループの名は、Os Cariocas。オス・カリオカスと読む。カリオカとは、リオデジャネイロの人のこと。
彼らの音楽は初体験だけど、これがもう!すっかりツボにはまってしまいましたのよ。
ずいぶんと歴史の長いアカペラグループなんだそうで。確かに、ステージ上の4人中2人は、かなり往年の貫禄が漂っていた。ええと、いくつって言ってたかな?もう軽く70歳は超えてそうな、渋いおじちゃんピアニスト。カッコいいんだ〜。


彼らの繰り出す音楽は、どのアカペラグループにも言えることだけど、とにかく心地いい。軽やかに、時に重厚感を持ちつつ、いわゆるボサノヴァのスタンダードを次々と歌い上げる。
お、この曲知ってる!!!と言える曲が大半を占めていた。それだけ、日本人にも浸透している、いわゆるボサノヴァらしいボサノヴァが選曲の中心となっていた。
もうそれだけで今夜のコンサートは大成功。


とりわけトム・ジョビンの名曲にじーんと来た。リオといえばカリオカ、カリオカといえばジョビン、ということで(?)、彼らの中でもジョビンの曲は特に大切にされているみたいだった。
Desafinado、そしてイパネマの娘、Ela e carioca…と、美しいメロディーが、美しい4人の声になって流れていく。美酒に酔いしれるんじゃなく、美声に酔いしれるひととき。(今夜はやや風邪気味だったため、アルコールはおあずけだったのだ)


さて、ネットでオス カリオカスと検索してみると、へぇ〜日本でもライブをやったりしてるのね。有名なのね。
しかも、世界最長不動のアカペラグループ、と形容されているぞ。なんだかすごいぞ。
結成は1942年なんだそう。えええ?もう60年以上も前???
もちろんメンバーは入れ替わっているんだろうけど、それでも、ひとつのグループが名前を変えずにそれだけの長い歴史をつづり続けているのはすごいことだ。
観客の顔ぶれも、そういえば往年のファンといった風情の、円熟味の増した素敵なご夫婦が多かった。
彼らに送られる拍手が、とても温かかった。


久々にいいコンサートに出会えたなぁ。
Take6が予定通り行われていたら、ずっとOs Cariocasのことは知らずにいたかも知れない…。
ケガの功名とは、こういうことを言うのね?

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