ソグラと過ごした1ヵ月半


日本から、初めての一人旅で、はるばるブラジルまで遊びに来てくれたソグラこと義母は、昨日、1ヵ月半ぶりに横浜の我が家に到着した。


帰る前の前の夜は、ソグラがすべて夕食を用意してくれ、自分で作るのより格段においしい肉じゃがや、横浜に遊びに行ったときに食べさせてくれたパンサンスーなどをともに味わった。
そして帰る前の夜は、私がすべて夕食を用意した。久々にめくる行正り香さんレシピ本より、チキンスープご飯。アジアンテイストな目新しい味を、ソグラは喜んで食べてくれた。


そんなふうに、なにかと外食がちだったこの1ヵ月半だったけど、帰る間際にはなんとなくお互いに家でゆっくり手料理を食べたくなって、お互いの味を伝えあったのである。


ソグラが1ヵ月半、我が家に滞在することになったときは、まぁせっかくビザは3ヶ月滞在していいことになっているんだから、いられるだけいればいいよね…くらいに思っていた。
いざもうすぐ到着、となったとき、1ヵ月半って長いかも…ブラジルで、この我が家で、果たしてソグラは快適に過ごしてくれるだろうか… などと、いささか不安に思ったのだ。正直。
我が家に、そんなに長い間、誰かをお泊めしたことはないし、自分も1ヶ月以上、誰かの家にお世話になったことはない。
自分の親とですら、高校を卒業してから一度も、1ヶ月以上一緒に過ごしたことはない。(長男の出産のときも、実母が東京の家に泊まったのは1ヶ月弱だよね?)
だから、なんとなく、見えない不安のようなものが私の中にはあった。
(ホントは、片付いていない納戸を見られたり、毎日ドタバタな生活習慣を見られたりするのが怖かったんだ。)


けれど、実際にソグラの顔を見たとたん、そんな思いはふっとんだ。
不安より、再会できたうれしさとか、これから一緒にいろんなことをしよう!という楽しみな気持ちの方が強くなった。ほんとに。不思議なことに。
そして始まったソグラとの日々… いやぁ、すっかり甘えさせてもらっちゃいましたよ。
来たばかりの言葉もわからないソグラに息子二人を託して、夫婦だけで夜のコンサートに行かせてもらったり。
昼間、私の用事があるとき、アレックスを見ていてもらったり。
さすがに言葉がわからないので、一人だけで外出することはなかったけれど、それでも1ヶ月くらい経った頃、コイの幼稚園まで送り迎えに一人で行ってもらった日もあったなぁ。
なんせ、日常のドタバタの中で、二人の息子のうちどちらか(もしくは両方)の相手をしてくれる…ということが、何より助かった。
息子たちにとっても、ずいぶん満ち足りた毎日だっただろうな。呼べばすぐに来てくれて、絵本を飽きるまで読んでくれて、いつも笑いかけてくれて。


ソグラとはもともと気が合うというか、話が合うというか。とても還暦を過ぎた人とは思えない若々しい感性を持っているソグラは、どんな話題にも着いて来られるから、会話をしていてとても楽しい。
二人だけの午後、子どもが寝てダンナの帰りを待つ夕食後…二人でいろんな話をしたなぁ。


人に言うとみんな驚く。義理のお母さんと1ヵ月半も!ご主人のいない日中はどうするの?!って。
でもね、私とソグラなら大丈夫。こういうのを相性というんだろうな、としみじみ思う。
たとえ実の親であっても、実の姉妹であっても、気が合う合わないはあると思う。それは、それぞれ一人の人間なんだもの、相性の合う合わないは肉親であってもあって当然のこと。
そして親も子も選べない、まして義理の母などという存在は、選ぶも何も…結婚すればもれなく伴ってくるものであり、それこそ選べないもの。
そんなソグラと相性が合うと言うのは、だから、ほとんど宝くじで一等を当てるようなものだと思う。
私はかなりラッキーだ。


そりゃ、生活習慣が違う人間が、突然一つ屋根の下で暮らすのだもの、お互いマイペースではいられないわけで。お互い、そりゃあ多少のストレスはあったと思うし、それがゼロだったら逆に怖いよね。
誰かと生活する以上、何らかの我慢は必要。で、結局、その我慢の度合いがどの程度かで、一緒に暮らせる相手かどうかが決まってくると思う。
私とソグラは、我慢の度合いがお互い最低限レベルで過ごせる相手なんだろうと思う。そうよね、お義母さん?!→私だけの思い過ごしではないことを祈る(笑)



ソグラが帰った我が家は、またいつもの日常に戻り、コイを叱る私の大声が飛び交い、アレックスの泣き叫ぶ声が響いている。
かと思えば、アレックスが昼寝している午後なんて、ああこんなに静かだったかしら…と思うくらい静かだ。
そんなつかのまの脱・核家族体験の1ヵ月半は、私にいろんなことを気付かせてくれた一ヵ月半でもあった。
夫婦だけの子育てでは見えないこと、にわか専業主婦には思いつかない生活のヒント。いろいろとソグラに教えてもらった。
ありがとう、おかあさん。


いつかコイやアレックスが結婚して、自分がソグラになったら、息子の嫁とこんな風に気が合う関係になれたら、それはすごく幸せなことだなぁ…なんて、かなり先のことまで思いを巡らせたりして。


そういえば、長い長いと思った1ヵ月半なのに、結構後半はあっという間で。
一緒に食べようと買っておいたアボガドやパネトーニ、それにミナスチーズと桃太郎トマト、食べずに帰っちゃったねぇ、お母さん。
しっかり私のお腹におさまりつつあります… あぁダイエットしなきゃ…