ブラジルで和楽器コンサート

生け花に民謡にソロバン…これだけ日本文化が定着しているサンパウロ和楽器の団体がないはずがない!と思ったら、ありましたありました。
その名も「ブラジル日本音楽協会」。筝曲の宮城会、正派、山田流、そして尺八琴古流(残念ながら都山流はないみたい)の4団体によって組織されている協会のようだ。
この団体が今日、日本音楽チャリティーコンサートを開いた。もちろん私も張り切って見に行ったよ!


冒頭、音楽監督を務める石見梅旭氏が挨拶。いわみ・ばいきょくとお読みするそうで、かれこれ80歳くらい?と見受けられるおじいさまだ。日本語オンリーでのご挨拶によると、このコンサートはもう25年ほど続いているそうだ。すごい歴史。
このおじいさんは、琴古流の師範らしい。すごいな、移民する際にしっかり尺八を連れてきたんだね。


さて、いよいよ開幕。
一曲目は、絹の道(唯是震一作曲)。筝6名、三弦3名、17弦1名、尺八1名によるなかなか豪華なステージだ。このうち4人は生粋の(日本の血が入ってない)ブラジル人、しかも20代前半の若者だった。漢字も読めないだろうに、あの縦譜(お琴の楽譜は漢数字で縦に書かれている)の読み方を覚えて、一生懸命練習したんだろう。そう思うとなんだか涙が出そうに…。


続いては、砧三章(沢井忠夫作曲)。これは上級者(教授所の欄に名前が載ってた人)による演奏だった…けれどいきなり出だしでズレちゃって、また1からやり直し!
そのおおらかさにびっくり。何事もなかったようにナチュラルに弾き直しちゃったよ。
途中、ところどころハラハラする部分もあったけど、いや何よりも、このブラジルの地で、現邦しかも沢井曲を選ぶあたりが素晴らしいと思った!


3曲目は尺八本曲の鹿之遠音。これはさきほど挨拶したおじいさまと、ブラジル人男性トミック梅京氏による演奏だった。このトミック氏がなかなかの腕前とみた。おじいさまの門下生なんだろう。


そして4曲目。私の学生時代を思い出させる一曲「秋の調べ」(宮城道雄作曲)である。
あれは私が2年生の頃だったかなぁ。4年のC先輩が、恐ろしく高い声で澄みやかに歌い上げていた名曲である。手もとっても細かくて難しくて、それを弾きながらあの高音で歌を歌うなんて信じられないっ!と、同期一同、ほとんど神様を見るような目でC先輩を見ていたものだった…。
で、今回はなんと、歌はソプラノ歌手を呼んでいた。和服の演奏家の隣で、原色ワンピースに身を包んだソプラノ歌手… なかなかこれもブラジルらしくて良かった。
あぁそれにしても懐かしいなぁ。あのときの尺八は、A柳さんだったっけ。

休憩15分を挟んで、次は「春の曲」(吉沢検校作曲)。これまた懐かしい、思い出深い曲だ。
これは3年のときだったっけ?OG会で演奏するために練習したんだよね。本手と替手を合わせるのが結構難しくて、苦労したんだっけ。そして歌いながら弾くのもやっぱり大変で…。
で、先ほどのソプラノ歌手に続き、この曲にも見事な演出がついていた。ステージに即席のお茶席が設けられ、薄茶手前のセレモニーが演奏に合わせて繰り広げられた。これにはブラジル人、大喜びである。熱心にカメラを構えていた。確かに、絵になるよねぇ。

6曲目「やまなみ」(野村正峰作曲)に続き、7曲目は「黒髪」(恋出市十郎作曲)。
これは大変シンプルな曲だから、へぇー演奏会でやるんだ?!と思ったら、これまた一ひねりありまして。今度は日本舞踊付きですよ。これも見応えアリ。
尺八はかなり若い男の子(石見アレキサンダーくん)が吹いていたから、彼のデビューステージなのかな?とも思った。新人演奏会とかでやる曲だったよね、これって。


ラストは大合奏で「元禄花見踊」(坂本勉作曲)。やっぱり大合奏はいいね、豪華で迫力があって、みんな楽しそうに演奏していて!メロディーも日本らしくて耳なじみがよくて、最後にふさわしい選曲だったんじゃないかな、と思った。


演奏のレベルは、びっくりするくらいスゴイ!!という感じではなかったけど、そういうことより、こーんな地球の裏側で、コンサートを開くほどの演奏家たちが活躍し、今も若い世代にしっかり引き継いでいるんだ…ということにとにかく感動である。
冒頭、おじいさまも話していた。どんどん非日系の若いブラジル人にも浸透してきている、そのことがうれしいと。


久々に生の演奏会を見て、なんだか私も弾きたくなってきて、かなり久々に爪をはめてみた。今日聞いた「春の曲」の楽譜を引っ張り出し、なんとか弾いてみたら、学生時代にタイムスリップした気分になったよ。


そういえば東京で私が所属していた合奏団「邦楽アンサンブル21世紀」のコンサートが6月17日(日)に浅草で開かれます!これはかなりオススメ。和楽器が奏でる斬新で美しいメロディーをぜひ一度体験していただきたいっ!
親子室もあります。お子様連れの方もぜひお越し下さい〜〜〜。(うちのコイも前回のコンサートを見に来ました、もちろん親子室でね)

詳しくは合奏団のサイト:邦楽アンサンブル21世紀までどうぞ!

※今日の日記は、お琴つながりの友にしかわからないマニアックな内容だったかも?!