二人子連れ初の飛行機旅行②〜飛行機に乗れないっ?(1日目)

自宅から空港へは、事前に予約しておいた日系人タクシー(マツオさん)で。
この方、タクシーだけでなく、まるで日本語便利屋さんのごとく、たとえば子どもが急に病気になって深夜救急病院に駆けつけなければならない、しかしポル語があまり話せない…などというときに運転から病院での通訳まで一手に引き受けてくれたりするという。
子どもがいるなら、一度は使うべし、との先輩のアドバイスにより、今回初めてお願いした。


8人乗りくらいの大きなバンで来てくれて、家族4人、ゆったりと空港まで向かうことが出来た。
この日はしかし連休前の夜とあって、道路は大混雑。空港に向かう人のみならず、実家や別荘などの地方都市に向かう人々の車で渋滞していたのだ。
マツオさんはさすが運転歴10数年とあって、都心部の抜け道をよくご存知。
うまく渋滞を避けて予定通り1時間弱でグァリューロス国際空港へ到着。


そう、今回は国内線なのに「国際」空港発着便なのだ。
連休だから国内線の便も混んでいるのだろう、そして私たちが乗るのは、今回だけのチャーター便なのだろう。それで夜遅くに、国際空港からの出発となったのだろう…。(以上、推測)
ちなみに国内線専用の空港なら、もっと我が家から近くて30分程度で着くのにー。
まぁ連休だから仕方ないわね。


この時点ですでに長男コイはぐっすり熟睡である。車の中で寝てしまったのだ。
あんなに飛行機飛行機と張り切っていたのに…。
ともあれ、私はアレックスを抱っこ紐で抱き、ダンナは16キロもあるコイを抱えてトランクを引っ張り、マツオさんとお別れして旅行会社のスタッフのもとへ向かう。

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スタッフの姿はすぐに確認できた。というのも、その周りに「CVC」のロゴ入りバッグを持った旅行客がわんさか集まっていたから。
ちなみにこのバッグ、我が家ももれなく持っている。
ここのツアーを利用する人には必ず支給されるようで、旅程表を受け取ったときにバッグも渡されたのだ。それなりにしっかりしたビニールのショルダーバッグである。
(でも、こんなのはいらないからその分ツアー代金を安くして〜と思うのは私だけ?)


スタッフに名前を告げると、子連れは列に並ばなくていいからと先導され、TAMのカウンターへ。
TAMは、VARIGが落ち目となった今、ブラジルでは最大手と言える航空会社だ。国内のほとんどを網羅しているし、南米各国にも飛んでいるエアライン。


さあいよいよ荷物も預けて身軽になるぞ!と意気込んだら…
ここで驚くべき事態が発生―――


なんと、国内線に乗るために、身分証明書の「ホンモノ」が必要、と言うのだ。


ちょっと説明がややこしくなるけれど、ブラジルでは「イデンチダージ」と呼ばれる写真入り身分証明書が命の次に大切といってもいいくらい、重要なものである。
たとえばビルに入管するとき、何か大きな買い物をするときなど、必ず提出を求められ、本人確認されるのである。日本だと免許証を見せるような感覚、だけどもっと厳重なもの(のような気がする)。
それだけ本人確認が大切な国、なんだけど、通常は「ホンモノ」ではなく「コピー」を持ち歩いている。そのコピーにもきちんと役所が認めたシールとスタンプが押してあり、単なるコピーではなく「公的に認められたコピー」なのだ。


今までどんな場面でもホンモノを求められたことなどない。
そしてこれは見ての通り役所のシール入りの確かなものだ。
熱く説明するもカウンターの姉さん一向に首を縦に振らない。CVCのスタッフも加勢してくれるがダメ。
そして一言、「取りに帰るしかない。10時半までに」。


その時、すでに9時半近くになっていた。あと1時間で自宅と空港を往復しろと?
ほとんどそれって不可能…
お先真っ暗。どうしようどうしよう、せっかくここまで来て飛行機に乗れないなんて!
もうその便のあとにはフロリアノポリス行きはない。これに乗れないってことは、もう旅行ができないってこと???
要するに、「海外旅行に行くのに、空港でパスポートを忘れたことに気付いた」状態よ。


いろんな思いがぐるぐると。しかし、とにかくやってみなきゃわかんないでしょう、
一応あと1時間ちょっとあるし。もしかしたら。
あーだこーだ言ってる時間ももどかしく、とにかく空港タクシーに乗りダンナひとりで自宅に身分証明書を取りに戻ることに―。


それにしてもだ。こんなことってあり?誰からもそんな失敗談を聞いたことはないし、旅行代理店からもそのような説明を受けてない。
もしかしたら、ものすごーく「常識」なことなのかも知れない、けどそんなこと全然知らないよ私たちは。
日本だって、国内線に乗るときにいちいち身分証明書出したりしないよね?他人名義でだって乗れちゃったりするよね?
犯罪が多い国だからこそ、本人確認をしっかりするんだろうし、それ自体はとてもいいことだと思うんだけどね…。


ともあれ、その間わたしは一人で荷物を見張り、コイとアレックスを見張り、時間ばかりを気にする一時間。
コイはこの期に及んでまだ寝ている、しかし私のひざにはアレックス。
仕方ないからカートに乗せたトランクの上でカエル状態でへばりつき寝ててもらったよ…。
(服がカエル色なのは、あくまで偶然よ)

時折、ダンナの携帯から経過報告を受けながら、ドキドキハラハラ。
時計の針がちょうど10時半を回ったころ、駆け足でカウンターに向かうダンナの姿。おーギリギリ間に合った!これぞ奇跡!!(タクシー運転手さん、相当頑張ってくれたらしい)


かくして、なんとか無事にチケットを受け取ることが出来たのだった。
やれやれ、やっと機内へ向かえるのか…と思いチケットを詳しく見たら。
出発時刻が11:59となっているではないか。
えー、あと1時間半も先じゃん…。
だったら、どうして10時半までに戻らなきゃならなかったのよ…。
10時半の根拠って何だったのよーCVCめ!!!


荷物を預け、寝床を奪われたカエルもといコイはすっかり目を覚まし、それからというもの、やれ「お腹すいた」だの「おしっこ」だの「早く飛行機に乗りたい」だの大騒ぎ!

あー。フライトまでの長い長い1時間半。二人の子連れには厳しい待ち時間なのだった。