初めての産婦人科検診


今日でサンパウロに来てちょうど1週間が経過した。もう1週間?
毎日割とのんびり、ぼーっと過ごしていたはずなのに、時は確かに流れていたんだね。
時差ぼけも、ちょうどこの1週間目を境に、なんとなく良くなってきたみたい。
昨日、今日と、お昼寝しないで頑張ったおかげか、息子は夕食も待たずに7時過ぎに眠りへ。私は夕食を食べて10時過ぎに耐え切れずベッドへ。
そして2人揃って朝の6時前に起床という状態。もう3:25の目覚めはなくなったよ!


そんな今日、ここに来て初めて産婦人科へ行ってきました。
家から車で20分くらいのところにある、メディカルビルのようなところに入っている
個人開業医で、女医のD先生。
夫がかなり頑張ってこの先生を見つけてくれ、一度下見に行って、ポルトガル語しか通じない受付嬢に電話で予約を入れておいてくれたのだ。あぁ、感謝!!!
今日も仕事を早退して、午後5時からの予約に間に合うように車で連れて行ってくれました。


日系人も、日本人駐在員も多いこの街には、日本語がわかるお医者さんもたくさんいらっしゃる。そして彼らは日本人向けの生活ガイドブックにちゃんと紹介されている。
だから普通はその情報をもとに先生を訪ねていけばいいのだけれど、我が家は保険の関係でかかれるお医者さんが限られているのだ。
このあたり、日本とは保険事情が全然違うので理解しにくいところなんだけれども…。
要するに、加入している保険の種類によって、使える病院が違うのだ。
そして我が家が加入している保険では、ガイドブックに載っているようなポピュラーな先生にはかかれないのだ。いや、かかってもいいんだけど保険適用外なので高額な医療費を支払わねばならない…。


そんなわけで、保険が適用でき、かつ、日本語でコミュニケーションができる産婦人科の先生を探さなければならなかったわけ。適用医療施設一覧みたいな本をつぶさに見て、日系ふうの名前の先生を探し出し、夫の数少ないブラジル人の知り合いに「この先生知ってるか?日本語ができるか?」とクチコミ調査をしたらしい…
なんと涙ぐましい努力!
その結果、たまたま、「日本語が確かできるはず」というD女医を発見できたというわけ。


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前置きが大変長くなりましたが。
午後5時という、日本では間違いなく診療は終わっているような時間に病院へ入る。
待合室は、小さな日本の個人病院みたい。椅子が10数脚あって、待っている人が3組くらいいた。明るい雰囲気で、花がふんだんに飾られている。白を基調にした、いわゆる病院という感じはあまりしないのね。
ここでしばし待つ…。30分くらい待っただろうか、すると受付で名前(私のファーストネーム)を呼ばれる。このあとも終始苗字ではなくファーストネームで呼ばれるわけだけど…なんとなく照れるねぇ。


受付では住所や電話番号、国籍などを聞かれ、受付嬢に体重を量られる。受付わきにある、なんともレトロチックな体重計に靴のままのぼる。目盛りはなぞの定規みたい。私の重さと、おもりを天秤にかけて、水平になった目盛りが私の体重、という計測方法。(って、わかるかいな?)こんなの初めて見ました…。
よくわからないけど、たぶん、前回より1キロも増えてないだろう。計測結果を特に伝えられなかったから不明なんだけども。


そしてまた待合室でしばし待つ。
結局、5時の予約だったのに、名前を呼ばれたのは6時半近かっただろうか。
その間もどんどん患者さんが増えていくよ…いったいここの病院は何時まで開いているのだ?


診察室は廊下をへだてた別室にあり、そこには髪を少し明るくカラーリングしたボブスタイルの40代後半とおぼしきメガネの日系人女性が座っていた。この方がD女医なのね。
ドキドキしつつ、最初はボアノイチ(こんばんは)から始まり、夫がポルトガル語で自己紹介を。まだブラジルに来て1週間で、病院にかかるのも今日が初めてだ、と。
そのうち日本語交じりでも大丈夫そうなことがわかり、こちらも先生も日本語ミックスで話し出した。


おとなしい感じで、誠実そうなD女医は、なかなかいい感じ。たとえ日本語でコミュニケーションができる医師であっても、必要以上に厳しいとか、あまり信頼できそうにないとか、診療方針が私たちの希望するモノと全然違うのだとすると、これは考え直さなければならないね…と夫と事前に話していたのだ。
そういう意味で、結構、今日は「賭け」だったんだよね。


だけどどうやらD女医についていっても良さそうだ。
帝王切開率がまだ8割とか9割とか言うブラジル、でも私は特にその必要がない限り、できるだけ自然分娩したいし。その希望を伝えると、ちゃんと受け入れてくれた。
それから、ブラジルでは、産婦人科と、産む施設(病院)と、血液やエコーの検査をする施設がすべて別々で、それぞれが保険適用内である必要があるんだけど、
私たちが希望する病院、検査施設を受診しても良いと言われた。
この2点がクリアされれば、とりあえず大丈夫。あとは夫立会いがどうとか、母子同室がどうとか、そのあたりの希望はそこまで大事なことではないからね。


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日本で入手しておいた母子手帳ポルトガル語訳版に、これまでの妊婦検診の記録や、前回の出産の記録を書き写しておいたので、それをまずD女医に見せる。
そして北海道の病院で書いてもらった英語の紹介状を渡す。そこには最新の血液検査の結果などが記載されている。
それでだいたい私の状態が把握できたようで、あとは少しの問診を。
「牛乳はよく飲むか」「ビタミン剤はとっているか」「糖尿病の検査はしたか」「ここまでで何か変わったことはないか」などなど…。
先生、かなり日本語できるじゃないですか!もう十分ですよ、ほんとに。これだけ理解しあえれば!
「貧血」という日本語がなかなか出てこなくて一瞬困ったけど、これもお互いの探りあいで最後にはわかったしね!



問診が終わると、診察室へ移りお腹の状態を見てもらった。メジャーで計測し、超音波検査を。日本の最新のものより劣る機械だと思うけど、十分問題なく赤ちゃんが見えるよ。
頭も体も大きくなり、心臓の音も元気に聞こえた。よかった。長時間飛行機に乗ってきたけど、変わりなく元気だったんだね。やっぱり姿を見て音を聞くと安心するね。
そして今回はしっかり見せてくれました… 立派なモノを…
はい。男の子のようです。やっぱり、そうきましたか。
はい。覚悟決めますよ、母さんは!



驚いたのは、問診〜診察のあいだ、ずーっとD女医がひとりですべてをこなしていること。
助手というか、看護婦さんが一人もいないんだよ!!!
まぁ妊婦検診だからたいした処置もないけどね、それでもエコーの後のお腹を拭いたり、診察台にのぼるための台を出し入れしたりするのは、日本なら看護婦さんの仕事だよね?
これは1人を扱うのに時間がかかるわなぁ… 人件費の問題かなぁ… などといろいろ考える。


そして最後に、今後受けるべき検査の項目(糖尿病、貧血、超音波)について説明を受け、今週中に検査機関に行ってくるように指示される。
こちらは場所を言われてもよくわからないので、持参した市内地図を見ながら、あぁこの通りのこのへんですね、としるしをつけながら確認。
すみませんね先生、こんなに時間のかかる患者で…
だけど先生は全然時間を気にするふうでもなく、じっくり、わかるまでやりとりしてくださる。すごいなぁ、この姿勢。これがブラジル時間なのだろうか。



かれこれ30分以上は診察室にいただろうか。待合室に戻ると、患者さんの数はまた増えていた!椅子がびっしり…。すでに7時を過ぎているんですけど。皆さん一体、何時の予約ですか???
いや私が時間かけちゃったんですけどね、すみません。
でも皆さんきっとブラジル時間に慣れているんだろうね。待たされるのも、待つのも当たり前。そんな感覚で過ごしているんだろうね。


帰り道は雨。帰宅ラッシュなのかわからないけど、ものすごい大渋滞の中、ほっと安堵の気持ちと一緒に我が家に帰ってきました。
とりあえず、いい先生にたまたま会えて良かった。やっぱりこれが、いまの我が家の最大の心配事だったからなぁ。
なんとか、ここで出産することができそうです。あぁ、本当に良かった。