ペリトモレノ氷河へ(パタゴニアその②)


初日は移動だけに費やしちゃったから、実質的な旅行1日目はいきなりパタゴニア観光最大のハイライトとも言える、ペリトモレノ氷河ですよ。
氷河から一番近いエル・カラファテという街に泊まっていた訳だけど、ここからバスで1時間ちょっとのところに、世界最大級の氷河があるのだ。


朝、現地ツアー会社のバスがホテルに迎えに来て、氷河一日観光ツアーに参加するお客を乗せてはいくつものホテルを回る。
さすがに観光シーズンだ。ホテルは満室に近い様子だし、他のホテルからのお客さんもたくさん。
バスだって空席がほとんどない状態…。


さて今日も朝から快晴!
街を出るとすぐにすがすがしい湖が広がる。湖の色がとてもきれいなのは、氷河の水が入っているから?
湖面にくっきりと山々が映り、月並みだけど、本当に鏡みたいだ。
街から氷河に向かう道はきれいに整備されていて、バスの旅はとても快適。
そして車窓が素晴らしい。湖、ひろびろとした草原、雪を抱く険しい山々…真っ赤に咲き乱れる花。スイスの風景みたいだ。

スイスよりそうね、全体的にスケールが大きくて、どこを見ても広々ととにかく広い。さすが、広大な面積を誇るアルゼンチン。
街から約80キロで氷河だけど、バスに揺られる1時間半ほどの間、景色のバリエーションが豊富でびっくり。
ガイドさんの説明(アルゼンチン人による英語解説を、日本人である私が聞き取ったところによる)では、このあたりのパタゴニアには3種類の風景があるそうだ。
ひとつは険しい山々の風景。そして湖や草原が広がる風景。もうひとつは、荒野のような、背の低い草がかろうじて生えていて強い風が吹き抜けているような風景。
みっつめの荒野風景の割合が高いかな、だからこそそんな中に湖や緑が現れると本当に感動する。
風景が3タイプに分かれるのは、南極方面から吹き抜ける強い風や、氷河の影響があるんだって。いずれにせよ、自然が織り成す美というのは、何にも増して素晴らしい。

そんなふうに、窓にへばりついて景色を楽しんでいるうちに、おおっ、あれはもしや氷河ですか??
ついに、淡く青くたたずむ美しい氷河の姿を発見。
そこは撮影スポットになっていて、みんなバスから降りてしばし写真タイム。ここからの風景は最高だったなぁ。
写真より実物の方がずっと素晴らしかったなぁ。


それから間もなくして、氷河クルーズ船乗り場に到着した。まずは船から氷河を観光するというものだ。
クルーズ代金はツアーに含まれていないので、一人25ペソずつ現金で支払った。(カード不可)
この船もお客さんでいっぱいだ。さすが観光シーズン…。


さて、いよいよ船がゆっくりと氷河へ向かう。
聞いてはいたけれど、氷河から吹いてくる風は本当に冷たい。この日の為に私達は防寒着を北海道から調達してもらっていた。
フリースとかダウンジャケットとか手袋とか…。乗り込む前は、こりゃちょっと大げさじゃないの?今日はカンカン照りですよ?と疑ったけど、こんなに快晴でも氷河風は冷たい冷たい。
防寒はやはり必須。
ぎゅぎゅっとアレックスを抱っこしつつ、近づいてくる氷河を眺める。
いやぁ、すごいなぁ氷河…。ツンツンにとんがった氷の塊がいくつもいくつも目の前に広がるよ。


だけどこの船、思ったより近くまで寄ってくれないのね?氷河が触れるくらいまで近寄るものじゃないの?(って、それは危険です)
ま、それにしてもすごいねぇ氷河って、美しいねぇ、寒いねぇ、などと言いながら、30分ちょっとのクルーズを終えた。
正直、ちょっと物足りないなぁと思っていたんだけど、次に訪れた展望台…そここそが、氷河のスケールを実感できる素晴らしいところだったのだ。


船乗り場からまたバスで移動し、30分弱で展望台に到着。
ここにも大型バスや自家用車がたっくさん。今日はそういえば土曜日だものねぇ。
まずは腹ごしらえ、ということで軽食スタンドへ向かう。ここではサンドイッチとかコーヒー、ジュース、スナック菓子などが売られている。
私たちはここで買い込み、スタンドわきの屋外テーブルで食べたんだけど、実は氷河観光はお弁当持参が基本なんだそうだ。
ホテルなどでお弁当(サンドイッチなど)を用意してもらい、それを持参し、氷河遊歩道を散策しながら休憩しつつお弁当を食べるのがいいらしい。
そうとは知らない私たち、のんびりとテーブルでランチタイムを過ごしてしまった…。
ま、ここも、木々に囲まれて涼しげで気持ちいいスポットだったので良かったけどね。

このペリト・モレノ氷河は、ロス・グラシアレス国立公園、日本語で言うと氷河国立公園に位置する代表的な氷河。
なんせこの国立公園内には、これだけの規模の氷河が47もあるというんだからすごい。
で、氷河を見るための展望台だけど、これがまた延々と結構果てしない遊歩道が続く…。木張りで歩きやすい遊歩道だから、子どもやお年寄りもOK。
ときどき階段があるからベビーカーはきついので、我が家はおんぶっこで、父と私が交代でアレックスを背負いつつ歩いた。暑い暑い。
氷河とはいえ、今日の最高気温は30度近くありそうだった。TシャツでもOKの陽気。
さて肝心の氷河の様子はというと… まず最初の展望スポットに足を止めて眺めたのはこんな風景。
すごい。巨大な氷の大地だ。

さっき船から見たのは、氷河を目線の高さから眺めたという感じ。で、今度は、上から氷河を見下ろす感じだ。
ここから見る氷河は、全長約35キロ、高さ約60メートル(って、ビル何階建て?)、先端部の幅が5キロ…という大迫力が実感できる。
一面、青白い氷の床なんだものー。
それにしてもキレイだ。水色とも白とも青とも言えない、神秘的なミルキーブルー。美しすぎる…。

横目で氷河を見つつ遊歩道を進むと、いくつかベンチのある展望スポットがある。
みんな、思い思いの場所に腰をおろし、確かに持参したサンドイッチを食べている。目の前に氷河を眺めながら。
そうか、お弁当持参っていう意味がやっとわかったよ。
で、氷河をじーっと見ていると、ときどきゴゴゴーンという地響きみたいな音がする。
それは氷河のどこかに亀裂が入った音。その音から間もなくして、どこかで小さな氷の崩落が起こったりするのだ。
この崩落は、真夏である12月から1月あたりに一番よく見られると言われていたから、11月の今ではまだ無理かな?と思っていた。
でもね、この日は暑かったからか、散策中何度も小崩落を目撃できたよ!
崩落の瞬間をビデオで収めようと誰もが頑張るんだけど、これだけ大きな氷河の、一体どこが崩落するのか、事前に予測などできないのだ…。
ガガっと崩れて初めて、あ!あそこあそこ!と指を差すという状態。
崩落後の水面はこんな感じ。

この氷河は動きが活発なのが特徴だそうで、こんなふうに崩落がひんぱんに起こって溶けては、また再氷結するんだそう。
何万年もかけて実を結んだ氷たちの終末を見届けるなんて… なんともロマンチックじゃありませんか。
そんなふうに、じーっと氷河を見ていても飽きることがないのであります。
だけど私たちはアレックスを背負っていたので、とにかく暑くて暑くて。バスの集合時間もあったので、頃合いを見て美しい氷河を後にした。


私、スイスで氷河を見たことがあるけれど、スイスとはもうスケールが違いますな。
スイスはスイスで、コンパクトにまとまった美景があるけれど、ここはさすがアルゼンチン。何もかもが雄大
特にこの氷河は、世界中探しても他では見つからない光景だと思う。
南米滞在中に一度は見ておくべき…と旅のプロたちが口を揃えるのもよーくわかる。
広大な北海道の田舎に住む両親も、そりゃ北海道とはスケールが違う!と大感動。氷河もそうだし、途中のスイス風の風景も。
遠かったけど来て良かった。そう実感できる、自信を持っておすすめできる観光スポットだった。